(前回 「パナソニック社長に届いた悲鳴 『達成感なき繁忙感』が阻んだDX」 から読む)

 パナソニックホールディングス(HD)のデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクト「パナソニックトランスフォーメーション(PX)」で2年目の壁に直面した社長の楠見雄規とCIO(最高情報責任者)の玉置肇。解を求めたのは同じように壁に直面していた地方の大手メーカー。2022年秋、楠見と玉置は新幹線に乗ってメーカー社長の元を訪れた。(本文敬称略)

■本連載のラインアップ(予定)
パナソニック社長に届いた悲鳴 「達成感なき繁忙感」が阻んだDX
・パナソニック社長「停滞の責任は経営陣に」 変革へ覚悟求めた役員合宿(今回)
・パナソニック、脱「ハンド作業」で事業拡大 ブルーヨンダー生かす
・パナソニックHD玉置CIO「『7つの原則』で壁を突破する」

 聞けば、社員に覚悟を示すため、役員合宿を開き、マニフェストを作成、さらには役員全員にマニフェストを完遂することを誓わせた直筆のサインもさせたという。まさに「血判状」だった。

 その帰路、新幹線の駅までの車中で楠見は玉置にこう切り出した。「うちも同じように役員合宿をやろう」。そうして、パナソニックHDでも2年目の壁を突破すべく役員合宿を開くことになった。

 もともと年2回、役員合宿はやっていた。通常であれば全社で話題が共通する人事などをテーマにすることも多いが、2023年3月の合宿でテーマになったのはIT(情報技術)だ。大阪府枚方市の研修施設に全役員を集めてPXへの覚悟を求める。そして土・日曜と1日半を使い、全役員の意見を盛り込んだ1つのマニフェストにまとめる。そんな算段だった。

「役員合宿でマニフェストをまとめられるのか」。合宿前、玉置肇CIOはそんな不安を抱えていた(写真=北山 宏一)
「役員合宿でマニフェストをまとめられるのか」。合宿前、玉置肇CIOはそんな不安を抱えていた(写真=北山 宏一)

 ただ、事業内容も考えも異なる役員の意見を集約できるのか。玉置らPX推進チームには不安があった。ITがテーマであることに、「『そのテーマで合宿するのか』と言った役員もいた」(PX推進チームのスタッフ)からだ。

楠見社長が自らパソコンを打ち始めた

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