若者は褒められたくない? やりがいは不要? 若者の仕事観、キャリア観について、SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏と、若者のモチベーション論を研究する金沢大学融合研究域教授の金間大介氏が激論を交わす。Z世代のマネジメントを行う人が意識すべき3つのアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは。

若者の仕事観・キャリア観について、SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏(左)と、金沢大学融合研究域融合科学系教授の金間大介氏(右)が議論を交わした
若者の仕事観・キャリア観について、SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏(左)と、金沢大学融合研究域融合科学系教授の金間大介氏(右)が議論を交わした

 2024年5月14日公開の記事「若者『誰よりも早く成長したい』は49.1% 『ホワイト辞め』の裏側」では、SHIBUYA109 lab.が2024年1月に24卒・25卒の男女438人を対象に実施した「Z世代のキャリア観に関する意識調査」と、15~24歳の男女463人を対象に実施した「Z世代の承認欲求に関する意識調査」の結果を基に、若者のキャリア意識について解説しました。

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 今回は、『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』(PHP研究所)の著者であり、若者のモチベーション論を研究している金沢大学融合研究域融合科学系教授 金間大介先生を迎え、若者のキャリア観や働き方について深掘りしていきます。

長田 麻衣 氏
SHIBUYA109 lab.所長
2017年にSHIBUYA109 エンタテイメントに入社。SHIBUYA109 マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、18 年5月に若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround 20(15~24 歳の男女)と接する毎日を過ごしている。宣伝会議などでのセミナー登壇・TBS『ひるおび!』コメンテーター・著書『若者の「生の声」から創る SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)

金間 大介 氏
金沢大学融合研究域融合科学系教授/東京大学未来ビジョン研究センター客員教授
北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士<工学>)、バージニア工科大学大学院、文部科学省科学技術・学術政策研究所、東京農業大学准教授などを経て、2021年から現職。博士号取得までは応用物理学を研究していたが、博士後期課程中に渡米して出合ったイノベーション・マネジメントに魅了される。それ以来、イノベーション論、モチベーション論などを研究。主な著書に『先生、どうか皆の前でほめないで下さい:いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社)、『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』(PHP研究所)など
この記事の流れ
  • Z世代は仕事を頑張りたいの? 頑張りたくないの?
  • Z世代が成長環境に求めること 「働きがい」はもう死語なのか?
  • 矛盾をはらむ「Z団子」な若手社員と接するには

Z世代は仕事を頑張りたいの? 頑張りたくないの?

長田麻衣(以下、長田) 金間研究室とSHIBUYA109 lab.は約1年間、若者のモチベーションについて共同研究を行っています。先日公開した「Z世代の承認欲求に関する意識調査」についても、金間研究室の皆さんと共同で調査を進めてきました。

 金間先生は、モチベーションの研究をされていますが、今の若者たちの特徴をどのように捉えていますか?

金間大介(以下、金間) これまで若者研究を進めてきて強く思うのは、今の若者は、一見すると矛盾する考えや概念を抱えて生きている、ということです。

 しかも本人たちは、葛藤することなく、至って平然と日々を過ごしているように見える。僕の調査研究でも、その矛盾をさらっと表明するところがあります。

長田 SHIBUYA109 lab.が24年1月に24卒・25卒の男女438人を対象に実施した「Z世代のキャリア観に関する意識調査」でも、そんな「矛盾するZ世代」の一端が見えていますね。

 例えば、「自分の市場価値を上げたい」と考えている若者は75%に達しています。また、「AIには代わられないような仕事・スキルを身につけたい」と考える人も70%に上っていて、今の若者は自分の市場価値を上げることに貪欲で、AIに負けないようなスキルの習得にも意欲的な様子がうかがえます。

 と、思いきや、「誰よりも早く成長したい」と考えているのは全体の49%程度にとどまりますし、「自分のペースで成長したいか」という問いに対しては、約80%がYesと答えている。意欲的な面と、マイペースな面が共存しているんです。

SHIBUYA109 lab.の調査から。調査期間:2024年1月、調査パネル:外部調査会社のアンケートパネルを使用(SHIBUYA109 lab.調べ GMOリサーチ プラットフォーム利用の調査)、居住地:1都3県(神奈川、千葉、埼玉)、対象:大学3~4年生の20~24歳の男女、回答者数:438人(男性172人/女性266人)。以下特記がない場合は同調査 出所:SHIBUYA109 lab.
SHIBUYA109 lab.の調査から。調査期間:2024年1月、調査パネル:外部調査会社のアンケートパネルを使用(SHIBUYA109 lab.調べ GMOリサーチ プラットフォーム利用の調査)、居住地:1都3県(神奈川、千葉、埼玉)、対象:大学3~4年生の20~24歳の男女、回答者数:438人(男性172人/女性266人)。以下特記がない場合は同調査 出所:SHIBUYA109 lab.
SHIBUYA109 lab.の調査から
SHIBUYA109 lab.の調査から

金間 この感じ、どこか既視感が……。と思ったら、ありました。

 リクルート就職みらい研究所が行った「2024年卒大学生・大学院生の『働きたい組織の特徴』」によると、「あなたはAとB、どちらの組織で働きたいか」という問いに対して、A「企業固有の技術や商品、ブランド、ノウハウなどが強みとなっている」の73.7%に対して、B「個々の人材のもつ専門性が強みとなっている」が26.3%となります。

長田 若者の中に矛盾が共存しているのはキャリア観以外にも見られます。

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