子育てをしていると、保育園や学校、塾などの対応に多かれ少なかれ不満や要望は持つもの。ただ、誰もがそれをしっかり伝えることはできるわけではありません。「モンペ(モンスターペアレント)と呼ばれるのではないか」「親が介入しすぎると、子どもが成長の機会を失ってしまうのではないか」などと躊躇(ちゅうちょ)してしまう人もいるでしょう。ただ、言うべきことはきちんと言っていかないと、育ちざかりの子どもに悪影響を及ぼす可能性もあります。本特集では、どんな不満や要望は伝えるべきで、どのように伝えればよいのかを、先輩親や専門家の取材を通じて考えていきます。

「モンスターペアレントと思われる」ことへの恐れがあった

 学校や保育園、習い事の教室などに不満や疑問を抱えても、親はなかなか思いを訴えにくいもの。ただ、事態が悪化し、「あのとき言っておけばよかった」と後悔することも少なくないようです。本記事では、そんな経験をした先輩親たちが登場。「物言う」ことができなかった理由や、今だから分かる反省点を聞いていきます。

 「俺は心が小さい最低の人間だから……」

 山内優子さん(仮名)は、長男・雄一君(小4、同)が小学校1年生の2学期に、突然そう言い始めたことに衝撃を受けたと言います。「1年生が自分からそんな言葉を口にするだろうか。もしかしたら、誰かにそんなことを言われたのかもしれない……」

 山内さんには心当たりがありました。それは担任の先生。雄一君は1学期からたびたび「学校に行きたくない」と言うことがありました。入学したばかりでまだ慣れていないのかもしれないと思いつつ、雄一君に理由を尋ねると「先生に怒られてばかりで怖い。どうすればいいか分からない」との答え。

 その後も先生とのやり取りを雄一君から聞くと、「クラスで一番あなたが悪い」と言われたり、授業中にクラスメートが雄一君の悪口を言っているのが聞こえても素知らぬ顔をしたりしていると打ち明けられました。

 それを聞いて山内さんは憤りを感じたと言います。「確かに雄一は落ち着きがない特性があり、もしかすると授業の進行を妨げることもあったのかもしれません。友達とけんかをすることもあったようです。ただ、話を聞いてみると、雄一だけが悪いというわけではなさそう。担任の先生があからさまに雄一だけを問題視し、行き過ぎた指導を行っているのではないかと疑問を感じました」

 ただ、山内さんはそうした思いを学校に伝えることはできませんでした。「私も夫もフルタイムで働いていたので、仕事が終わってから連絡するにしても午後7時や8時になります。そんな時間に学校へ電話をかけても留守番電話になっていてつながりませんし、先生の指導方針に不満を訴えても、モンペ(モンスターペアレント)と思われることを恐れる気持ちもありました

 極め付きは、1学期の終わりに行われた担任の先生との個人面談。「雄一君の行動にクラスみんなが困っています」と言われても、山内さんはどうすればよいのか分かりませんでした。

 「先生はこまめに電話や連絡帳で訴える親の声だけに反応しているのではないのだろうか。雄一だって友達から意地悪をされたこともあるのに」。山内さんはそう思いつつも、雄一君がトラブルを起こさないように家で「行動する前に、相手の気持ちを考えて」と伝え続けるくらいしかできませんでした。しかし、状況はよくならず、2学期になってもたびたび担任の先生から「問題行動を起こして、他の児童に迷惑をかけている」との連絡が入ります。そして、雄一君からは「先生から『他の学校に行ってしまいなさい』と言われるから学校に行きたくない」とも相談されました。

 そんな中、雄一君は冒頭のような発言をするようになってしまったのですが、2学期に入ってから事態が動き始めたといいます。