コンテンツにスキップ

花神 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。61に拘る者 (会話 | 投稿記録) による 2011年2月19日 (土) 09:35個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎あらすじ)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

花神』(かしん) は、司馬遼太郎の長編歴史小説。日本近代兵制の創始者・大村益次郎(村田蔵六)の生涯を描く。1969年昭和44年)10月1日から1971年(昭和46年)11月6日まで『朝日新聞』夕刊に、633回にわたって連載された。

初版単行本は1972年(昭和47年)に、新潮社全4巻で出版(新装改訂版全1巻が1993年(平成5年)に刊)。

現行版は新潮文庫全3巻(初版1976年、改版2002年)で、『司馬遼太郎全集 30.31』(文藝春秋)にもある。

あらすじ


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


周防国吉敷郡(現在は、山口県山口市に編入)の百姓に生まれた村田蔵六(のちに大村益次郎と改名)は、郷里防長を出て、大坂適塾緒方洪庵らを師として研鑽を積み、抜群の成績を上げた。医師として故郷に戻った蔵六だが、人と交わるのが不向きなため田舎では変人扱いされていた。

しかし時代の最先端の科学研究とその実用化に動く諸大名の要請により、ずば抜けて洋書を解読できる蔵六は、シーボルトの弟子二宮敬作の進言で、四国宇和島藩での軍艦建造に招かれ、それを機に洋学の普及のため江戸で私塾「鳩居堂」を開き、幕府の研究教育機関でも出講するようになる。

出世をしても自らを売り込むことに興味のない蔵六だが、倒幕へ向け藩内改革を目論む長州藩志士桂小五郎は、やがて江戸で出会った蔵六を招き、軍政改革の重要ポストにつける。その出自に対し藩内でも差別や抵抗を受けつつ、また倒幕へ向かってゆく長州藩の活動を、過激派として侮蔑の念を隠さない蘭学者洋学者福沢諭吉ほか多数)たちの白い目を承知しつつ、蔵六は時代に花を咲かせる花神(花咲か爺さん)としての役割を担っていく。

長州征伐における勝利と、高杉晋作没後の奇兵隊を新編成し、さらには新政府の兵部大輔として倒幕軍の総司令官を務め、戊辰戦争の勝利に貢献し明治維新確立の功労者となった。さらに新制度による軍備近代化の確立を進める。一方で(本人は意に介さなかったが)、旧来の思考でしか判断のできない者たちからの偏見・嫉妬・批判はさらに深まり、遂に京の宿泊先で遭難した。死の床にあってもやがて来たる最後の大乱「西南戦争」を予感し、新製の大砲を用意しろという遺言を残し、最後まで技術者であり実務家として生涯を終える。

作品冒頭に、緒方家の血を引く謹厳な老学者が作者司馬を前に、花やぐ世界を寂しく生きた男と、シーボルトの娘楠本イネという女性の心の通いは恋だったのかという独言を引用している。

大河ドラマ

本作を原作として、同名のドラマがNHK大河ドラマ第15作として制作された。1977年1月2日から12月25日に全52話で放送された。村田蔵六(大村益次郎)は中村梅之助が演じた。

関連項目