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暫定予算

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暫定予算(ざんていよさん)とは年度開始までに本予算が成立しない場合に、本予算の成立までの空白期間をつなぐために組んだ予算のこと[1]

解説

予算編成が遅れたり、議会審議が長引いたりして本予算が会計年度の開始前に成立しない場合に組まれることが多い。10日間から2ヶ月程度の短期間での予算であり、新規事業費などを盛り込まず、経常的経費と公共事業の継続案件など必要最小限の予算に限られることが多い。議会の承認を受けて、暫定予算が成立する。

その後で本予算が成立すると、暫定予算は本予算に吸収される。

国は財政法第30条により必要に応じて暫定予算を編成することができる。なお、当初予算又は暫定予算が年度開始前までに成立しなかった場合は現行法では全く想定されていない。日本国憲法下でこのような予算空白という事態は2013年4月時点で最大で1週間ほどではあるが17回発生しており、その際には恩給費・生活保護費・司法修習生の手当など特定期日に支給すべき経費については支給延期・後払いなどが起こった[2][3][4]

かつては野党は国会の日程闘争により審議を長引かせ、政府に年度内成立を断念させることを「成果」としていたため、暫定予算が必要になることが多かった。1972年(昭和47年)~1992年(平成4年)度は21年連続で年度内成立ができなかったが、そのうち半数を超える12年で暫定予算が編成されている。しかし近年は、審議拒否戦術に対する世論の風当たりの強さもあり、野党は予算の成立を遅らせるよりも、審議内容で(首相出席の集中審議を増やすなどして)「実」を取る傾向が強く、予算の成立時期が大幅に遅れたり、暫定予算が編成されることは以前ほど見られなくなっている[5]。近年の例では、2012年(平成24年)度は補正予算審議が先行したことや政府の不手際から予算審議が遅れ、暫定予算が編成されたが、これは14年ぶりのことだった。因みに1998年(平成10年)の時は橋本内閣のときに大蔵省接待汚職事件が発生して、国会審議が停滞したためである[6]

2013年(平成25年)度、2015年(平成27年)度の予算審議にあたっても暫定予算が組まれたが、これはいずれも年末に衆院選(第46回衆議院議員総選挙第47回衆議院議員総選挙)が行われ、予算編成が遅れたことによる。

ちなみに、大日本帝国時代は大日本帝国憲法第71条で本予算が年度開始前までに成立しなかった場合には前年度の予算がそのまま新年度予算として執行される規定があったため、暫定予算が生まれる余地が存在しなかった。

地方自治体は地方自治法第218条により本予算が年度開始前までに成立しなかった場合や地方公共団体の分置廃合があった場合など必要に応じて暫定予算を編成することができ、地方公共団体の首長は特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるときには、専決処分で暫定予算を成立させることができる。

日本放送協会の予算は放送法70条により国会の承認を受ける必要があるが、国会の承認が得られない場合は同法71条により総務大臣の認可によって3ヶ月以内の暫定予算を施行することができる。

アメリカ合衆国では当初予算や暫定予算が成立しない場合は、政府閉鎖という事態が発生する。

プロイセンにおいてはオットー・フォン・ビスマルク首相が軍制改革の予算案が議会で否決された際に「憲法に国王と両議院のいずれもが予算に同意できない場合の取り扱いが規定されておらず、だからといって予算不成立を理由に国家運営を停止させるわけにはいかない以上、首相は主権者たる国王からの負託に基づいて国家運営を行うべき」として無予算統治を正当化する論拠に空隙説を用いた。無予算統治は4年に及び、その間に無予算統治は違憲とする議会側と対立したが、最終的にはビスマルクが無予算統治期間の予算について議会に事後承認を求める事後承認法を提出する代わりに、無予算統治は国政運営上不可避であったとして免責を得ることで議会と妥協した。

脚注

  1. ^ 朝日新聞出版「知恵蔵2007」
  2. ^ 大石眞「議会法」(有斐閣アルマ)104・105頁
  3. ^ 「政府機関を閉鎖」と脅しても関連法案の打開策にならない 野党の修正案取り込みが早道 ZAKZAK 2011年3月8日
  4. ^ 国会キーワード75 暫定予算 参議院HP
  5. ^ 日本経済新聞2019年2月6日 「予算審議なぜ着々? 野党は統計問題で見せ場 与野党合意が布石」
  6. ^ 14年ぶりに暫定予算編成へ 政府・民主三役会議で了承朝日新聞 2012年3月22日

参考文献

関連項目