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ユーグレノゾア

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ユーグレノゾア
トリパノソーマと赤血球
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: エクスカバータ Excavata
亜界 : ユーグレノゾア Euglenozoa
Cavalier-Smith, 1981, emend. Simpson, 1997
下位分類
本文参照

ユーグレノゾア(Euglenozoa)は、運動性のある藻類として有名なミドリムシが属するユーグレナ植物門(Euglenophyta)と、眠り病を引き起こす事で知られる病原虫トリパノソーマなどが含まれるキネトプラスト類(Kinetoplastida)とをまとめた分類群である。1981年、Cavarier-Smithにより提唱さた。

概論

多くの自由生活性の鞭毛虫と、少数の寄生虫として重要な種を含むグループである。大部分は小型で体長15-40μm程度であるが、ユーグレナ植物の中には500μmに達するものもいる。

ユーグレノゾアの生物の大部分は、細胞前部の窪み(apical pocket)から生じる二本の鞭毛を持つ。鞭毛の一方は前方に伸ばし、もう一方は後方に引きずるか、或いは退化的である。後鞭毛が極端に短い場合は窪みから出ず、光学顕微鏡観察では一本鞭毛であるかのように見える。この窪みの近傍(種によっては内部)には捕食装置(cytostome)があり、鞭毛基部から伸びる鞭毛根の一つに支持されている。この構造は、後述するユーグレノゾア共通の特徴の一つである。

多くのユーグレノゾアの生物は、バクテリア等の小さな獲物を捕食するか、吸収栄養を行う。吸収栄養は寄生性の種に限らず、自由遊泳性で捕食と併用する種もある。しかしながらユーグレナ植物の大部分は葉緑体を持っており、独立栄養生活を営む。そのような光合成を行う種では、光に応答する為の眼点を備える場合が多い。ユーグレナ植物の光合成色素組成は陸上植物のそれに近く、葉緑体が緑藻の二次共生に由来するものである事を示唆している。

ユーグレノゾア共通の特徴

Euglena sp.:細胞中央のピンク色の球は細胞核、多数見られる緑色の顆粒は葉緑体、上部の赤い点は「Euglena」という名前の由来でもある眼点(eu- '真の、美しい'+glena '眼')。

ユーグレノゾアは、藻類と病原虫というおよそ異なる生活様式の生物をまとめたグループであるが、その一体性は形態形質、分子形質の両面から強力に支持されている。

分子形質
解析対象として代表的な分子である18S rRNAによる系統解析を初めとして、多くの分子種でユーグレナ植物とキネトプラスト類の単系統性が支持されている。
形態形質
ミトコンドリア
  • 団扇型(盤状)のミトコンドリアクリステを持つ。このタイプのクリステは、全生物群を通してユーグレノゾアとペルコロゾア(Percolozoa、→ヘテロロボサ)にのみ存在する。詳しくは盤状クリステ類を参照。
鞭毛
  • 鞭毛軸糸に沿ってパラキシアルロッド(paraxial rod)が存在する。
  • 鞭毛に小毛を持つ(場合がある)。この小毛は不等毛藻とは異なり、非常に細い非管状小毛である。
  • 3系統の微小管性鞭毛根(dosal root; 背側鞭毛根、intermediate root;中間鞭毛根、ventral root; 腹側鞭毛根)を持ち、それらの生じる位置に相同性がある。捕食性の種では、腹側鞭毛根は捕食装置へ向かって伸びる。
細胞分裂
  • 核膜残存型(完全閉鎖型)の核分裂を行う。
  • 中期赤道板は形成されない。
  • 有性生殖は知られていない。

分類

Division Euglenophyta ユーグレナ植物門
主に光合成による独立栄養性。一部に葉緑体の獲得以前に分岐した、或いは葉緑体を二次的に失った無色の生物を含む。詳細はユーグレナ植物門を参照。
  • Suborder Eutreptiina ユートレプチア亜目
  • Suborder Euglenina ユーグレナ亜目
  • Suborder Rhabdomonadina ラブドモナス亜目
  • Suborder Sphenomonadina スフェノモナス亜目
  • Suborder Heteronematina ヘテロネマ亜目
  • Suborder Euglenamorphina ユーグレノモルファ亜目
Kinetoplastida キネトプラスト類
20世紀後半からキネトプラスト目として扱われてきたが、ここではキネトプラスト綱(Kinetoplastea)として分子系統解析に基づいたVickermanによる体系を示す。詳細はキネトプラスト類を参照。
  • Order Prokinetoplastida プロキネトプラスト目
魚類の外部寄生虫Ichtyobodoアメーバの共生体Perkinsiellaからなる群。
  • Order Neobodonida ネオボド目
二本鞭毛。基本的に自由生活性。NeobodoDimastigellaなど。
  • Order Parabodonida パラボド目
二本鞭毛。多くは自由生活性だが、一部の種は寄生性である。CryptobiaParabodoほか。
  • Order Eubodonida ユーボド目
二本鞭毛でうち一本に非管状のマスチゴネマがある。自由生活性のボドヒゲムシ(Bodo)のみからなるが、従来Bodoとされてきた種のある程度多くのものがParabodoNeobodoに分割されていることに注意が必要。
  • Order Trypanosomatida トリパノソーマ目
一本鞭毛。従来のトリパノソーマ亜目。トリパノソーマリーシュマニアなど、すべて寄生性である。
Diplonemids ディプロネマ類
2属(DiplonemaRhynchopus)から成る小さな分類群。

関連項目

参考文献

  • バイオディバーシティ・シリーズ(3)藻類の多様性と系統 pp. 251-5. :千原光雄 編 裳華房(1999) ISBN 4-7853-5826-2
  • Lee JJ, Leedale GF, Bradbury P. (2000) The Illustrated Guide to The Protozoa, 2nd. vol. II pp. 1135-84. Society of Protozoologists, Lawrence, Kansas. ISBN 1-891276-23-9
  • Cavalier-Smith, T. (1981). “The origin and early evolu-tion of the eukaryotic cell”. In M.J.Carlile, J. .F. Collins and B.E.B. Moseley (eds.). Molecular and Cellular Aspects of Microbial Evolution. Society for General Microbiology Symposium 32. Cambridge University Press. pp. pp. 33-84. ISBN 0521241081 
  • Moreira, D., López-García, P., and Vickerman, K. (2004). “An updated view of kinetoplastid phylogeny using environmental sequences and a closer outgroup: proposal for a new classification of the class Kinetoplastea”. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 54 (5): 1861-1875. 

外部リンク

※分類表に Stepahnopogon 属が含まれているが、一般にユーグレノゾアとはみなされていない。