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結婚初夜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
正常位で膣性交する男女(エドゥアール=アンリ・アヴリルの絵画)

結婚初夜(けっこんしょや)とは、夫婦結婚後初めて行う性交(通常はへの陰茎の挿入を伴う膣性交)のこと。原義は文字通り、結婚後初めて迎える夜のことである。新婚初夜(しんこんしょや)、また単に 初夜とも言い、特に性交について強調する場合は 初夜性交とも呼ぶ。

概要

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多くの国や文化圏では、夫婦は性的パートナーであり、日常的に性交を行う関係であるとされる。夫婦間の性交を「夫婦の営み」「夫婦生活」と呼ぶなど、夫婦が性交することは普通のこととされるほか、離婚を問う裁判においては長期間にわたって性交がないことを夫婦関係の破綻と認定する[1]。後述するように、性交によって夫婦が結ばれるとする考えも存在し、文化的にも法的にも、夫婦と性交は分けて考えることのできないものであり、とりわけ夫婦となってから初めての性交は夫婦関係を構築していく第一歩として特別視される。

中世ヨーロッパの結婚初夜

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西洋においては、旧約聖書創世記には以下の記述がある。

第2章
24. それで人はその父と母を離れて、妻と結び合い、一体となるのである。
25. 人とその妻とは、ふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。

カトリック教会においては聖書のこれらのことばを特に肉体的交わりの意味であるとし、婚姻の合意のみでは夫婦は一体とならず、夫婦行為が為されてはじめて夫婦は一体となり、婚姻が完成されると解釈している[2]

中世ヨーロッパの王侯貴族においては政略結婚が一般的であり、初夜性交の不成立によって婚姻の無効を申し立てられることを防ぐため、司祭の立会い看視のもとで性交を行ったり、初夜性交が完遂されたことを国内外に発表したとされる。

当時のカトリックの教義解釈では、一切の避妊をすることなく[注釈 1]陰茎を膣に挿入し、膣内射精まで完遂することが条件とされていた[3]。新郎の性的不能もカトリック法においては婚姻の成立の妨げになることから、司祭は性交後の新婦の膣内を職権によって確認し、膣内射精されたことを確かめる必要があった。

しかし(中世日本の武士階級にもいえることであるが)政略結婚においては、新郎が精通を、新婦が初潮を迎えていないような低年齢での結婚もあったため、膣内射精の完遂までとなると困難もあった。

ルイ13世アンヌ・ドートリッシュの結婚においては、ブルボン朝ハプスブルク家の政略結婚であるが、お互いにまだ14歳であり、初夜性交は完遂されたと発表されたものの、実際には失敗に終わり、その後数年間にわたり未完成婚のままであったとされる(アンヌ・ドートリッシュ#フランス王妃の項を参照)。

日本の結婚初夜

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日本においても、結婚初夜に新婚夫婦は性交をするのが一般的とされ、婚礼のしきたりについて示した小笠原流礼法の床入りが有名である。

結婚披露宴を終えた夫婦はその後の宴会には参加せず、布団の敷かれた奥の間に通され、そこで初夜性交を行った。隣室に立会人をもうけ、初夜性交の完遂は宴会の席の親族一同に報告され、家と家との結婚であるとされたかつての結婚感における両家の結婚の完成を祝ったのである[注釈 2]

しかし童貞処女見合い結婚など性経験に乏しい場合も少なくなく、極度の緊張によって新郎に勃起が得られなかったり(新婚性勃起障害)、挿入前に新郎が射精してしまう・新婦に湿潤が得られない、中折れや膣内射精障害などで射精に至れないなど、実際には初夜性交をうまく行えない場合も多かった。立会人としては新婚夫婦の交わりの不成立を祝いの席に報告するわけにもいかないことや、新郎にとっては床入り開始から新郎が射精するまでの時間が短すぎても長すぎても、その後の親族からのからかいの対象となってしまうことなどから、立会人に心付けとしていくらかの金銭を渡して立会を免じてもらい、床入りはつつがなく成功したとして適時に報告してもらうようになったり、宴に濁酒白酒、アワビや蛤などをふるまうことで立会人の報告に代えるなど、立会人の存在は形骸化していった。白濁した酒を精液に見立て、それが「出た」=新郎が射精した、という隠喩、アワビや蛤は女性器の隠喩である。出されたアワビや蛤に酒をかけることは不粋とされたが、酒席においてはしばしば行われた。

なお結婚後は速やかに子をもうけることが望ましいとされ、とりわけ初夜性交による妊娠は特別な意味を持っていたため、婚礼の日取りは新婦の排卵日を見計らって決められた。

現代の結婚初夜

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現代においては、恋愛結婚婚前交渉が一般化したことや、結婚を個人と個人のものとする考え方が広まったことにより、結婚初夜の性交の重要性は以前に比べて低くなった。法的・社会的なものである「結婚」という区切りよりも、二人が出会って初めての性交が重視されるようになり、単に「初夜」と呼ぶ場合、結婚前の初性交を指すことが増えている。本来は結婚を意味する「結ばれる」という言葉も、近年では恋人同士の性的結合(性交)を意味する用法へと変化している。

いわゆるできちゃった結婚ではなく、結婚まで避妊を徹底していた場合、コンドームを装着せず直接粘膜接触を伴う挿入や膣内射精を結婚初夜を迎えて初めて行うケースはあるが、それさえもオギノ式の応用による「安全日」にはコンドームを使用しないカップルなどもおり、結婚初夜に特別異なることをするケースは減少している。

結婚初夜について、日本においてはバブル景気の頃まではホテルの大宴会場などを用いて盛大な披露宴を執り行い、その日の内に新婚旅行へ出発、その夜に初夜性交を行うことが多かったとされる。新婚旅行中の性交によって妊娠した子を表す「ハネムーンベビー」という言葉も生まれたが、バブル崩壊とともに地味婚が台頭、披露宴は縮小され、新婚旅行も式当日の出発ではなく別日の出発となり、式当日は新郎新婦の友人など親しい関係者を招いての2次会、3次会を開いて新郎新婦も参加する形態が増えた。 結果として、結婚式当日の夜は新郎新婦は遅くまで友人らとともに過ごすこととなり、疲れによって性交を行う気力がないことなどから、初夜性交が「結婚後初めての夜」とは異なるケースが増えている。

関連項目

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  • 未完成婚 - 結婚初夜が完遂されていない状態の夫婦のこと
  • 初夜権 - 結婚初夜に新郎より前に新婦と性交する権利。国や地方、時代によって、領主や新郎の父、村の長老など、権利を持つものが異なっていた。

注釈

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  1. ^ カトリックの教義の厳格な解釈においては元来、避妊をはじめ、生殖を目的としない性行為は禁忌である。
  2. ^ 家と家の結婚を、血統と血統の合流と捉えれば、初夜の膣性交によって新郎の亀頭粘膜が新婦の愛液に暴露したり、新郎の精液が新婦の膣内に放出されることによる体液交換は、まさに血統の合流が完成した瞬間である。

出典

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  1. ^ 弁護士法人みずほ中央法律事務所 (2013年11月28日). “セックスレス(性交渉拒否)は程度によっては離婚原因となる”. 2019年9月20日閲覧。
  2. ^ 枝村茂 (2015年10月). “カトリック婚姻法における世俗性と宗教性”. p. 260-261. 2019年9月20日閲覧。
  3. ^ John Anthony Hardon. “Consummated Marriage”. Pocket Catholic Dictionary. Image Books. p. 91. ISBN 9780385232388